製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 19世紀後期 江戸時代末
素材/技法 木綿、天然染料、天然顔料 / 筒描、線描、摺込み
サイズ 幅(緯)36cm、長さ(経)85cm
荒波に立ち向かうように駆ける姿が印象的な”波乗り兎”模様の木綿地筒描布。
婚礼等のお祝いごとに際して紺屋(こうや)への特別な発注で手掛けられるものであり、作品からは吉祥感・躍動感とともに布に込められた祈りが伝わってまいります。
両織り耳と織り始(下辺)が備わった一巾分の布で、製作当初の作品の種類・用途は定かではありませんが、上部の朱赤横縞の入り方を見ると蒲団表や夜着ではなく、馬掛け或いは小ぶりな油単として数枚接ぎで仕立てられていたもののように思われます。
うさぎは輪郭線を伴わずに手描の破線や暈しを駆使して柔らかく表現している点は江戸期の染め職人仕事に符合し、波・飛沫の描き方と青の色彩感、ベンガラの落ち着いた色味を併せ、時代に由来する風雅と精神性が薫ってまいります。
一巾分ながらしっかりと完成美を宿している点が本布の最大の魅力であり見どころ、江戸期紺屋職人の技術の高さとセンスの良さ、粋(いき)が実感される一枚です。
(下は光学顕微鏡による画像)