製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア Coromandel coast
製作年代(推定) 18世紀初中期
渡来地・使用地 シャム王国 アユタヤ王朝期
素材/技法 木綿、天然染料 / 木版捺染、手描き(カラムカリ)、媒染、防染、片面染め
サイズ 横24.3cm、縦15.2cm
インドで手掛けられ、アユタヤ王朝期18世紀のシャム王国(タイ)にもたらされた宮廷儀礼用布としての古渡りインド更紗裂。
”菩薩(天人テパノン)”が描かれた”仏手(ほとけで)”の呼称で知られる種類のインド更紗で、シャム王国でデザインされインド南東部コロマンデル海岸エリアで製作された特注のもの、高度な技術を有する絵付け・染め職人が製作にあたっており、海洋交易により世界各所にもたらされた(古渡り)インド更紗の中でも取り分け技術・意匠の完成度の高さで定評があり、当時の日本では”シャム更紗(シャムロ染め)”の名でその仏教的意匠が珍重され、大名・富裕商人・茶人等が愛好した様子が伝わるところとなります。
本裂はアユタヤ王朝において儀礼用布として用いられた所謂”仏手”として知られる、主模様に菱格子と菩薩(テパノン)の連続模様が描かれた大判インド更紗のエンドボーダーの一部分と考察されるものです(タイ・バンコク国立博物館に同手更紗が所蔵されている)。
花繋ぎ模様が配された細幅ボーダーに上下を挟まれ、約10cmの太幅ボーダーに黄染めを背景にシャム更紗特有のデザイン構成による模様が染め描かれていますが、とくに目を惹かれるのが仏法・王国を守護する蛇龍神”ナーガ”の躍動感溢れる姿で、仏手の呼称の由来である”菩薩(天人テパノン)”、仏教に縁の吉祥の動物”鹿””うさぎ”の具象模様が同時に収まっている点、裂のプロポーションと色柄のバランスが整っている点で、本布には尽きせぬ魅力が感じられます。
(下は光学顕微鏡による画像)
(参考画像) 18世紀 日本渡り 黄地花卉豹文様 部分裂 井伊家伝来 彦根更紗