




ミャンマー シャン州 インレー湖エリアにて

antiques AEO LIFE MARKET <アンティーク染織・古裂・骨董 イオ・ライフ・マーケット>
online shop 新サイトがオープンしました
アンティーク染織・古裂・骨董 イオ・ライフ・マーケット online shop






祝祭儀礼用ロインクロス”ピオ(pio)”の現地伝世品ですが、本布は色表出の完成度が極めて高い”茜染め木綿糸”が用いられている点で資料的に貴重かつ稀少な作例です。
織りはトラジャ文化圏(サダン、ママサ、マッキ、ロンコンのいずれかの支族)でなされたとみてまず間違いないですが、木綿糸の出自と茜染めについては推理・推定はできても、確たることは化学的分析・検証がなされるまでは結論を出すことができません。
確実に言えることは、この布が古くからトラジャの地に海洋交易でもたらされ葬祭儀礼の特別な布として用いられてきたインド茜染め木綿”カセダ”(下の参考画像参照)への憧れ・尊敬のもと手掛けられたものであり、カセダの色を志向していること、聖布”maa toraja”として所有一族の間で大切に保管・継承されてきたものであることです。
本ピオは下の光学顕微鏡画像でわかるように、地組織の緯糸及び紋織の絵緯、織物を構成するすべての緯糸が引き揃え双糸であり、多くのピオが絵緯のみ引き揃え双糸が用いられるところ、やや特殊なつくりのものと言うことができます。
中央本体部に残る典型的な縦じわ痕から、ロインクロス(=褌)として用いられたことは特定できますが、全長4m弱とピオとしては短め(通常5m以上)であり、幼児・子供用等として仕立てられた可能性を指摘することができます。
この高度な茜媒染による染めがトラジャの地で行われたのかどうか興味は尽きませんが、大航海時代を遥かに遡る時代から香料・香辛料交易によりインド染織がもたらされ、外来及び地産の布々を多様に用いる文化が育まれてきたトラジャの地ですので、現代の眼ですぐには判別・解明できないものが多数あること自体、なんら不思議ではありません。
簡単には答えの出ない方々のことに想いを巡らせつつ鑑賞するのが愉しい一品です。

インドネシア・スラウェシ トラジャ 木綿茜染め・緯紋織 祭事用ロインクロス
製作地 インドネシア スラウェシ島 トラジャ地方
製作年代(推定) 19世紀末 - 20世紀初期
素材/技法 木綿、天然染料 / 茜媒染、引き揃え双糸(緯)、平地、緯紋織
サイズ 幅(緯)34cm、全長(経)368cm(フリンジ部分除く)



(参考画像 左:本布、右:インド茜染め木綿(トラジャ渡り 祭事用カセダ)

(下は光学顕微鏡による画像)





中国 貴州省 黔東南ミャオ族トン族自治州凱里市にて




先祖崇拝の祝祭・葬祭で着用されるラオ・ソン族(Lao Song)の男女の上着”スア・ヒ(sua hi)”においては、衣裳の表と裏とが反転します。
より凝ったパッチワークとアップリケ装飾が施される”表”を自身の身体に密着させ”裏”を外界へと向けます。密に織られ黒染めされた木綿地、表と裏で破綻の無い極細密な針縫いと装飾モチーフは守護・吉祥とともに自身の魂を健全に保持し先祖の魂と交信する術(すべ)となります。
装飾について特筆すべきは、脇スリット(=隙間)から魔が入り込むのを防ぐための目眩ましの渦巻”吊るし鉤(kho kut)”モチーフの出来の秀逸さで、ひとつひとつが揺れている視覚効果を生み出すために、巧みな糸遣いと刺繍技術を加えていることが判ります。
上着の所有者が亡くなった際には表裏を逆転させ、生前は身体に密着させていた側(表)を外界に表出させ棺に掛けますが、これは生者と死者の魂の行方と関わるラオ・ソン族の死生観に基づく慣習であり、どのように培われてきたものなのか興味が尽きません。
デザイン面においても織り・染め・縫いの技巧面においても固有の完成美を有する衣装作品で、それは上記のような精神的密度の高さに由来するものとなります。

タイ ラオ・ソン族 刺繍&パッチワーク 男性用祭事衣装
製作地 タイ中部 ペッチャブリー 県 Phetchaburi
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名 ラオ・ソン族 Lao Song
素材/技法 木綿、絹、染料 / 平織、刺繍、パッチワーク、アップリケ
サイズ 袖丈46cm、肩幅45cm、着丈約87cm






(下は光学顕微鏡による画像)


