




ミャンマー シャン州 インレー湖エリアにて

antiques AEO LIFE MARKET <アンティーク染織・古裂・骨董 イオ・ライフ・マーケット>
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12月はカンボジア染織・インドネシア染織を中心に直近の現地蒐集品をご紹介します



製作地 カンボジア南部 コンポンチャム
製作年代(推定) 20世紀初期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地(三枚綾) 緯絣
サイズ 幅(緯)83cm、全長(経)190cm
一見して織り地が極め細かく艶やかであるとともに絣模様の括り染めが精緻な、優美で気品あるこの腰衣用布は、百年を遡る20世紀初期のコンポンチャムで手掛けられたものとなります。
精練度合いの高い絹糸を素材に、緻密な幾何学模様が明彩豊かな染めで表現される、この時代のコンポンチャム絣の典型様式とも言える作例で、プロフー(福木)染料の”黄”、黄と藍の掛け合わせの”緑”の発色の美しさが際立ちます。
点描が散りばめられた菱格子は仏法を守護する蛇龍神”ナーガの胴体と鱗”、格子の中の多重楕円模様は”ナーガの眼”を象徴するものであり、幾何学模様化されたイスラーム的デザイン様式でありながらも、クメール仏教(ヒンドゥ仏教)がモチーフの下地となっている点にカンボジア伝統染織としての特色が見られます。
同種デザインの絹絣について、時代が下がると表情ある点描(=ナーガの鱗)は単なる点と線になり、眼は花状に変化し、”菱格子花模様”と呼称することが適切となりますが、本布はその手前の具象&幾何学模様混交作品と言えます。
素材面・技術面でひとつの完成度の高みに達したもの、今では失われし質感・表情のアンティーク・チャム系絹絣の逸品です。




(下は光学顕微鏡による画像)



製作地 インドネシア スラウェシ島 タナ・トラジャ
製作年代(推定) 20世紀初期
素材/技法 木綿、天然染料 / カード織 (ダブルフェイスト織、経捩織)
サイズ 幅:11cm(3枚接ぎ)、全長:186cm
トラジャの木造建築を装飾する彫刻模様がそのまま織物に写し取られたような表情の、このサダン・トラジャ人の手によるカード織(Tablet weaving)帯カマンダンは、祝祭儀礼用腰衣の裾部に付される目的で手掛けられたもので、現在も製作の伝統が続くママサ・トラジャとは異なり、20世紀初期には製作の伝統が途絶えたと考察される”失われし染織”となります。
”失われし染織”には、約百年前に製作の伝統が途絶えたことにプラスして、もはやトラジャ人自身を含め誰もこの素材と技術、同じ色柄表情のカード織作品を再現することは困難である、という要素が加わります。
3枚接ぎの幅11cmに100枚近い数のタブレット(水牛の骨角製)が駆使され、長さ186cmの一連の織物の中に”これでもか”と言わんばかりの様々なデザイン・パターンの大小モチーフが緻密に織り描かれており、トラジャ伝統信仰”アルクトドロ”に基づく精神性の密度の高さが伝わってまいります。
古い時代のサダン・トラジャ木綿染色を象徴するいろと言える”濃厚な赤茶”は染料・媒染の全容が未だ解明されておりませんが、百年を経過してなお色褪せが感じられず、瑞々しく力強い生命感を有していることは特筆すべき点、インド更紗等を聖布”Maa India”として崇める中、自身の手においても数世紀を経ても色褪せず朽ちない布、聖布”Maa Toraja”を志向した様子を、本織物から伺うことができます。
古のサダン・トラジャ染織の本質が凝縮した貴重資料としてのカマンダン完品です。









(下は光学顕微鏡による画像)


(参考画像) サダン・トラジャ伝統家屋の壁面彫刻

インドネシア スラウェシ島 タナ・トラジャにて

製作地 カンボジア南部 (現ベトナム領内カンプチア・クロム)
製作年代(推定) 20世紀前期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地(三枚綾) 緯絣
サイズ 幅(緯)89cm、全長(経)294cm

仏教寺院・宗教儀式で用いられた絵絣タイプの”ピダン(Pidan)”。坐姿の仏陀様が3段で描かれ、上には聖鳥、下には白象・猿の吉祥の動物たちが配されたもの、3mの長いサイズも相俟って、眼前にすると荘厳な空気感に包み込まれるような一枚です。
そしてこの荘厳な空気感の源泉が、カンボウジュ種蚕繭(黄金繭)絹とラックを主体とする天然染料及び三枚綾織で生み出される独特の布感と色彩(=光沢の抑えられたマットな布感と深みのある幽玄な色彩)であり、本布は実使用のピダン・マスターピースとしての格調美を有します。
20世紀前期(1940-50年頃と推定)作と、マスターピースとしては比較的新しい時代のものですが、左右ボーダーのヤントラ模様、3段の仏陀様それぞれの台座やナーガの光背など細部の描写が緻密で括り・染め・織りの技巧に優れ、何より仏陀様の顔・アムレット状の耳・体躯のバランスが秀逸かつ色表情も優美、篤い信仰を有する者が確かな技術により丹精を籠めて手掛けた作品であることが伝わります。
全体・細部にあまねく美と精神性が宿る、準アンティーク・ピダンの薫り高き逸品です。








(下は光学顕微鏡による画像)



製作地 琉球王国(現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀中後期
素材/技法 木綿、顔料、染料 / 型染、糊防染、片面染め
サイズ 横(緯)33.5cm、縦(経)80cm

蜀江文格子と小花のモチーフが重層的に配置された、精緻かつボリューム感のある模様構成が見所の古紅型。地色及び小花と鶴を彩る顔料の色味に王朝期紅型ならではの華やぎと落ち着きを兼ね備えた固有美が実感される一枚です。
この紅型の地色は、朱で下地を染め動物性染料の臙脂を上掛けする”花色地(ハナイルジー)”ですが、製作時の色が残るのは上画像で確認できる最下部分(別布が縫い重なっていた箇所と推察される)のみで、それ以外は経年と使用による褐色・色変化が加わっていることが確認できます。
しかしながら青の顔料が影響したとも考えられる色変化は均質でムラ感はなく、色変化後のやや茶味掛かったいろには枯淡かつ優美な味わいがあります。
33.5cmの型紙巾が整い、80cmの長さを有する貴重な衣裳解きの身頃布、土地と時代の色香に惹き込まれる逸品です。





(下は光学顕微鏡による画像)



製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 19世紀 江戸時代末-明治時代
素材/技法 木綿、天然藍 / 絞り染め
サイズ 裄丈37cm、袖巾21cm、袖丈42cm、身丈68cm
複数の絞り染め技法を駆使し、藍濃淡を効かせ布地全面に”真桑瓜(マクワウリ)”模様が生き生きと染め描かれた子供着。
一つ身の身頃には魔除けの背守りが縫われ、真桑瓜は蔓を長く張り巡らせ葉と実がふっくらと瑞々しく育つ姿が可憐に表されており、子供の健やかな成長を祈る親・家族の気持ちが情景・物語として伝わってまいります。
質感豊かな手紡ぎ糸で織られた木綿地は柔らか味が強く当時としては相当上質な種類のもの、藍の染まり具合も深くかつ瑞々しく、手の込んだ絞り染めを併せて特別上等なものを紺屋に発注したものと推察されます。
戦争や震災等の災禍をくぐり抜けて、ここまで状態良く現在まで守り伝えられてきたことに感謝をしたくなる一品です。







(下は光学顕微鏡による画像)




製作地 インドネシア バリ島
製作年代(推定) 19世紀末~20世紀初め
素材/技法 絹、天然染料、銀モール糸 / 平地格子織
サイズ 幅(緯):33cm、全長(経):232cm(経は2箇所の接ぎ合せあり)
製作地バリ島での蒐集品ですが、もし本布が江戸時代の日本に渡ってきていたとしたら、茶人・数寄者が放っては置かないであろう”茶裂的”古格と雅趣が匂い立つ絹織物です。
単純な色糸構成の平易な縞織布のようにも思えますが、細部を良く観察すると(下の光学顕微鏡画像参照)、経・緯ともに一見する以上に多くの色数が不規則的に使用されており、銀モール糸や色がグラデーション状に変化する先染め糸(絣糸状のもの)が加えられるなど、生半ではない凝ったつくりのものであることが判ります。
日本国内で現在に伝わる渡り間道裂及びそれを用いた仕覆等の茶裂の中には、明確な製作地が分からないものが多数ありますが、オランダ東インド会社がバタヴィア(ジャカルタ)経由でもたらしたインドネシア諸島作の染織が含まれることはまず間違いのないところです。
もちろん能書き抜きで美しく、時代を超えて瑞々しい生命力を輝かせ続けるアンティーク染織の逸品です。






(下は光学顕微鏡による画像)





(online shop記載 コンディションについての参照画像)








インドネシア スラウェシ島 タナ・トラジャにて

製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア Coromandel coast
製作年代(推定) 17世紀-18世紀
渡来地・使用地 インドネシア スラウェシ島 トラジャ地方 ※スマトラ島経由でトラジャ地方にもたらされた可能性あり
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き(カラムカリ)、媒染、防染、両面染め
サイズ 102cm × 257cm

京都 西本願寺 南余間格天井
※上写真は西本願寺公式サイトより転載いたしております
安土桃山~江戸時代初中期を中心に、大名・富裕商人をはじめとする数寄者・茶人にもてはやされた古渡インド更紗のうち、格式ある寺院・城郭等の天井装飾とされた”格天井(ごうてんじょう)”に近似するデザインのものが”格天井手(ごうてんじょうで)”の呼称で愛玩・愛蔵された様子を、現在に伝わる布裂(茶の湯裂・裂帖等)により確認することができます。
そして同種デザインのインド更紗は、スマトラ島旧港市国家の諸地、本布の蒐集地であるスラウェシ島トラジャ地方、セイロン島(スリランカ)等にもたらされております。(染めとともに経緯絣が併用されるなど緻密で手の込んだ作例が多く見い出されている)
本布はスラウェシ島トラジャ地方に伝世したものですが、日本で”格天井手”とされたように、トラジャ地方においては”Passura’ Toraya(トラジャ伝統家屋壁面彫刻)文様”と認識されており、一族・家族の間で代々受け継がれる”聖布マア(Maa India)”のひとつとされていたものとなります。
ちなみに製作地インドの視点では、本更紗に見られる網目・モザイク様格子模様は、ムガル建築の装飾で著名な透かし彫り”ジャーリー(Jaali)”に帰属するというのが自然な見方であり、”生命樹・立木”模様の交易更紗と同様に、近世海洋交易の時代の染織・工藝にまつわる美的感受性(美の様式)の遍在・共振・交換(相互影響)に思いが至るデザイン・モチーフと言えます。
17世紀~18世紀作と比定される、同手模様更紗の中で古手と位置づけられる本布は、インド・コロマンデルにおいて高度な職人技術が維持されていた時代に手掛けられたもの、描線・色味に”古渡(こわたり)”たる格調・高雅を有しており、ほんの数cm角のどの部位をとっても濃密な美の生命・精神性が宿っている様を観取できます。
布を目にしながら、土地・時代を跨ぐ”共振する美の遺伝子”に想いを馳せることに、尽きせぬ魅力を感じる一枚です。



インドネシア スラウェシ島 ママサ・トラジャ 木造舟形家屋 壁面彫刻 Passura’ Toraya












インドネシア スラウェシ島 ママサ・トラジャにて




インドネシア スラウェシ島 ママサ・トラジャにて

製作地 インドネシア スラウェシ島 ママサ・トラジャ
製作年代(推定) 19世紀
素材/技法 木綿、天然染料 / カード織 (ダブルフェイスト織、経捩織)
サイズ 幅:3.8cm、全長:178cm(両端の接ぎ合せ含む)
手紡ぎ・天然色染めの木綿糸を素材とする、現在目に(手に)することのできるトラジャ文化圏のカード織(Tablet Weaving)帯の中では、かなり古手のタイプと位置づけられる一品。
帯の片縁に縫いつけられていた角組の組紐と縫糸が断片的に残っており、祝祭用筒状腰衣の裾を装飾していたものと推定されますが、帯の両端に別なカード織帯が接ぎ足されており、これは製作当初と異なるサイズの腰衣を後年仕立てる際になされたものとも考えられます。
数十枚のカードを手指で巧みにあやつり織り描かれる多様な幾何学モチーフ、取り分け流麗な波状模様に目を惹かれますが、よく見ると半具象の”水牛の群れ”とも思われるモチーフを見い出すことができ、作品からは技術の高さとともに、民族の歴史と信仰のもとで培われた伝統染織としての豊かな精神性が伝わってまいります。
欠損が加わり、あらたな使用に耐えられないながらも、これを長年打ち捨てずに保存・継承してきたのは、代々一族の間で伝世される聖布”マア(Maa)”のひとつであったからと考察されます。




(下は光学顕微鏡による画像)





インドネシア スラウェシ島 タナ・トラジャにて